2015年11月25日水曜日

「テロに屈しない」?

一月に続く先日のパリでの痛ましいテロには世界中が大きな衝撃を受けました。私も慌ててパリの友人達に連絡をして安否を確認しました。ロシアの旅客機墜落もテロと断定されましたが、世界のいたる所で根深い憎しみの連鎖が加速し、大勢の罪もない人達の命を奪い続けています。

政治家が好んで使う台詞「テロに屈しない」という言葉の意味はなんだろう?と考え込んでしまいます。誰かがどこかで「テロに屈しない」という勇ましい言葉を発するたびに、またどこかで報復攻撃や報復テロが起きます。この連鎖を断ち切る知恵を人類は持ち合わせていないのでしょうか。

 我が国はよく「課題先進国」といわれます。戦争の加害者であり被害者でもある我が国は、世界で唯一原子爆弾を二発も落とされた国です。戦争の悲惨さを体験し尽くしたどん底から再起し、70年に渡る平和な国家を創り上げ、その精神や成果を海外での人道支援や経済支援にも発揮し続けて来ました。安直に「テロに屈しない」という言葉を発するよりも、そんな国だからこそのメッセージ発信や行動こそが我々の責務なのではないでしょうか。

積極的平和外交の名の下に、今や一連の安保関連法が成立し、集団的自衛権が容認されて有志連合にも名を連ねる我が国は、ISから攻撃対象国としてはっきりと名指しされています。実際、今年初めには二人の日本人が彼等に殺害されました。今や国内においても、パリやニューヨークと同様に、テロの標的としてのリスクは高まっていると認識せざるを得ません。これまでの平和外交の成果で、長く中立の立場を保ってきた日本の国際的ポジションは、既に全く異なる次元に突入しているのです。

自分に何ができるわけでもありませんが、せめて周囲の人達への感謝の気持ちを大切にしながら日々を過ごしたいと思います。