2013年7月23日火曜日

年齢を重ねるということ

今月、誕生日を迎えてまた一つ歳を重ねた。私と同じ世代の友人達は、大抵が民間企業や公官庁で、そろそろ上がりのポジションに入って、傍から見ていると悠々自適な生活を満喫しているようだ。本社で上り詰めることは叶わなくとも、子会社等で比較的余裕のあるポジションに着いたり、子供たちも既に巣立っていて、やれゴルフだの、夫婦での海外旅行だのと、金銭的にも時間的にも余裕のある生活を送っているように見える。
 
それに比べて、私自身は現在起業して3年が経ち、自ら始めた事業を軌道に乗せようと悪戦苦闘の毎日が続いている。先日、久し振りに会った昔の同僚から、「もっと楽な選択肢はいくらでもあったろうに、一体、何の為にまだそんな苦労を続けているのですか?」と面と向かって言われた(笑)。なるほど、そのような見方もあるのかもしれないな、と思った。
 
しかし、人にどう思われようと、これが自分の求める生き方なのだから仕方がない。こんなに課題や可能性に満ち溢れた時代を迎えて、このまま穏便にリタイアして行くというような生き方は自分には絶対に出来ないし向いていないのだ。
 
今のような生き方にはっきりと転換できたのはやはりソニーを辞めたからだろう。ソニー時代には大企業のエスタブリッシュメントとしての自分の将来像をイメージしていた時期もあったように思う。だから、その頃の自分からすれば、今の自分の生きる道は想像だに出来なかったかもしれないし、当時の自分とは人生の価値観も内面も大きく変わったと感じる。しかし、そのお陰で、いろいろと日々の生活は大変でも、自分の思い通りに、フットワークのいい生き方を手に入れることが出来た。
 
昔、クリント・イーストウッドが歳を取ることについて「よりいい人間になるということだ」とサラリと言ってのけていたのをアメリカのTV番組で見かけて、実に爽やかでカッコいい人だな、と思った。年齢的にもその境地にはまだまだほど遠いが、生涯、何かに挑戦し続ける生き方を続けられたら本望だ。
 
健康に留意しながら、周囲への感謝の気持ちを忘れずに、また新たな成長や飛躍を実感できる歳にしたいと思う。

2013年7月5日金曜日

久し振りの欧州訪問

先日、数年ぶりに欧州を訪ねました。 
 
ルクセンブルク経済通商省東京貿易投資事務所のアレンジで6月19日、20日にルクセンブルクで開催されたICT 2013 Spring, Europeに参加して基調講演を行ってきました。
 
講演のテーマはHow Japan should contribute to the world in the era of cloud computing として、震災後の復興遅延の様子や家電業界を始めとした産業界の苦境を概観し、クラウドコンピューティングの時代を迎えて日本は大きく変わらねばならないこと、そして、20世紀に工業製品の輸出でmade in Japanブランドを築き上げたスタイルやビジネスモデルとは別の発想、別のやりかたで世界貢献をして行かねばならないことを持論として展開しました。その上で、現在弊社で進めていること、および今後やろうとしていることについてALEXCIOUSおよCOUNTDOWNそれぞれのサイト紹介も含めて行ないました 
 
全体の来訪者が4000名ということでしたので、比較的小規模なイベントでしたが、日本からも10数社のスタートアップの若い経営者達が参加していて頼もしく思いました。現地の投資家や起業家支援団体の人達も含め、朝食会、夕食会などで活発な交流が行われました。 
 
ルクセンブルクには日本人が経営する日本食レストランは2軒のみということでしたが、25年間続けていてHenri大公もお気に入りという「鎌倉」という和食レストランを訪れて宮前さんというオーナーとも懇談しましたが、世界中どこに出掛けても現地の人達に一目置かれた日本人が活躍している姿に接するのは嬉しいものです。
 
Tsumeという社名のフィギュア制作会社も訪問しましたが、社長はじめ、スタッフは全員欧州の外国人。東映アニメやバンダイなど、日本のライセンサーから正式に地域限定ライセンスを受けてキャラクターフィギュアの3Dモデリングと制作を行っていました。日本で言えばグッドスマイルカンパニーを小規模にしたような感じでした。丁度、7月初旬のパリでのJapan Expoに向けた新作の運び出しの準備を行っていましたが、非常にクウォリティの高い作品を作っていました。今や日本のアニメやコミックに大きな影響を受けて育った外国人は珍しい存在ではなくなりました。
 
西ヶ廣大使から日本大使公邸でのランチにご招待いただき、ルクセンブルク経済通商省の人達も加わって日欧の経済情勢等の情報交換、意見交換を行いましたが、ちょうど終わったばかりのG8の様子などを興味深く聞かせていただきました。日本ではアベノミクスに関心が集まったような報道もありましたが話題の中心は圧倒的にシリア情勢についてだったとのことでした。
 
その後に立ち寄ったパリでは、漫画、雑貨、食品、日本酒、着物、茶・茶道具等、日本関連の商品を扱っているところを網羅的に案内してもらいましたが、うどん屋が流行っていてどこも入り口に行列が出来ているのが印象的でした。2大百貨店であるプランタンとラファイエットおよび老舗百貨店のボンマルシェ、日仏文化会館なども訪問しましたが、ボンマルシェには日本酒の販売コーナーもあってさまざまな銘柄が試飲されていました。
 
パリの後でロンドンにも立ち寄りましたが、ソニー時代に頻繁に訪れていた頃に比べると圧倒的に中国人が増えているのが目立ちました。ブランド店や空港なども大勢の中国人で溢れ返っている印象でした。また、もともと欧州での日本車のシェアはそれほど高くはないものの、それでも当時はそこそこ走っていたように記憶していますが、今回は日本車はまったく見かけませんでした。家電量販店には立ち寄りませんでしたが、街中ではSamsungの広告を見かけることはあっても、ソニーやパナソニックの宣伝を見かけることはなく、数年前に比べて、前述のような新たな日本ブームとは裏腹に、かつてこの世の春を謳歌した分野での日本の国力の衰えを実感しました。 

Louvre, Paris
Team "Tsume"