2012年1月22日日曜日

NHK番組での「青年の主張」っぽい「中高年の主張」


昨晩のNHKの番組でのプレゼンがところどころカットされていたので、こちらに全文を掲載致します。「スティーブ・ジョブズを事例に、失敗と挫折をテーマに3分以内でプレゼンして欲しい」というお題をいただいて考えた内容になります。なお、放送後、番組の主旨や全体構成、進行に関して私宛てにいただいているコメントもありますが、私はこの番組に御協力しただけの立場で、私自身がこの番組制作に関わったわけではありませんので、番組に対していただいたコメントはそのまま局の方にお伝えさせていただくように致します。

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スティーブ・ジョブズが世界中から称賛されるビジネスリーダーになった一番の要因は、彼が、いわゆる失敗や挫折をエネルギーにして結果的には壮大な物語を作り上げて行ったというその生きざまにこそあったと思います。

失敗や挫折というのは、実は我々にとって最大の学びのチャンス、自分を成長させるためのきっかけや気づきでもあるわけで、失敗にくじけず、何がまずかったかを反省して将来への足がかりにしていけば、人生における貴重な経験として生きるわけですし、そもそも、人間は失敗を恐れたり、失敗できない、と思うと元気がなくなってしまいます。

ジョブズも数々の失敗をしていますが、最大の挫折、すなわち「人生の転機」は、自ら創業したアップルを一度追い出されたことであったと思います。しかし、それが彼にとってその後の大きな業績を生み出す大きな経験として、後に生きたわけです。アップルを追い出されるという経験がなければ、iPodもiPhoneもiPadも、あるいはToy Storyもこの世に生れてなかったかもしれません。

2005年6月のスタンフォード大学での有名なスピーチの中で、彼は人生で起きる様々なことは後で振り返るとすべて繋がっている、ということをConnecting the dots、「点と点を繋ぐ」、という表現で語っています。人生に無駄はない、ということだと思います。

更にジョブズは、他にも、我々、特に若い人達にとって示唆に富むいくつかの言葉を残してくれました。まず、「Stay hungry, Stay foolish」。この言葉そのものは、ジョブズも有名なWhole Earth Catalogの最終刊からピックアップして座右の銘にしていたということで知られています。私自身も、自分が、居心地がいいとか、今の状態に満足と思ったら、それは自分への危険信号だと思うようにしていますが、この言葉は、常に我々の向上心をかきたててくれるパワーのある言葉だと思います

次に、「Keep looking, don't settle」。自分が本当にやりたいことを見つけるために、あきらめるな、妥協するな、求め続けろ、ということを言っています。

そして、Your time is limited, so don't waste it living someone else's life.  ちゃんと自分の人生を生きなさい、ということ。我々は知らず知らず、社会常識や、世間体や、親のアドバイスや、そういうものに囚われた人生を送ったりしがちですが、この言葉は我々の生き方に対する自戒の言葉として非常にいいものだと思います。

この写真(省略)は、日本人のスタイルを象徴する写真として持ってきたもので、典型的な日本の大企業の入社式の様子ですが、ここには日本人の安定志向とか、ブランド志向とか、一見行儀よく周囲に合わせるスタイルなどが表れていて、良いにしろ悪いにしろ、そのような傾向を象徴する写真だと思います。また、スイスのビジネススクールの調査によると、昨年の国際競争力ランキングにおいて、日本は起業家精神の項目で調査対象59カ国中最下位である、という結果であったそうです。

しかし、実は、時代を少し遡ると、日本にも世界から尊敬された偉大な起業家がいました。代表的なのはソニーを創業した井深大さんや盛田昭夫さんだと思いますが、それこそ、スティーブ・ジョブズも盛田さんのことを偉大な起業家そして時代を作ったチャレンジャーとして非常に慕っていたと聞いています。当時、ソニーはモルモットと呼ばれることがあり、「ソニーのモルモット精神」という言葉がありましたが、これは、失敗を恐れずに未知の領域に真っ先にチャレンジして新しい価値を誰よりも先に生み出すチャレンジ精神のことを表現していて、当時のソニースピリッツを象徴する言葉となっていました。

私からのメッセージとしては、震災もあって、日本はまさに崖っぷちに追い込まれた状態と言えますが、そんな今だからこそ、①人と違うことにチャレンジしようという気概、②リスクを恐れず、むしろリスクはチャンスだという発想、そして③自分のアジェンダに基づいて自らが行動する、もっと自由自在で天真爛漫かつ破天荒に自分の人生を生きるタイプの人達が数として増えれば、そこから優れた次世代のリーダーもおのずと生れてくるだろうと思っています。

2012年1月13日金曜日

ALEXCIOUS as an Auditorium

乱暴な意見に聞こえるかもしれませんが、私は、私も在籍していたソニーも含め、今の日本の多くの大企業の役割はある意味終わったと思っていて(立派に素晴らしい社会貢献を果たし終えた、という意味で)、20世紀のスタイルで大きくなり過ぎて硬直化した会社に、21世紀の成長ビジョンが描けないのはむしろ当然と思います。そういう大企業にいつまでも成長神話を期待するのは期待する方が問題で、期待する側の勝手なノスタルジーでもあると思います。今の時代は、はやり言葉を使って佐々木俊尚さん流に言えば、「グローバル・プラットフォームとノマドの時代」で、日本的な大企業の居場所がなくなってきている時代とも言えます。これからは、日本人も、もっと個人個人のアジェンダで世界に向けてどんどん積極的に発信していくことが重要で、それを手伝ってくれるのがインターネットというかクラウド等の「グローバル・プラットフォーム」であると思っています。

私は、ALEXCIOUSという「グローバル・オンライン・プラットフォーム」を、日本の多くの才能ある個人が登壇して世界に向けて発信する「舞台、オーディトリアム」というコンセプトで開発しました。今のものは、まだスタートしたばかりで、私が本来やりたいことのごく一部しか実現できていませんが、単なる物販の為のe-commerceをやろうとしているわけではありません。日本人は「モノ」作りはうまいけど「コト」作りが下手くそ、すなわち、ストーリー作りがあまり上手ではないと思うのですが、私が真にやっていきたいのは、多くの日本のチャレンジャー達が生み出している壮大な物語を世界にどんどん伝えていくことです。その物語をALEXCIOUSという舞台の上で登壇者の方々に自由に演じていただき、そのうちにいろんな共演も自然発生的に始まって、その舞台を世界中の人達が興味深く見ている、というイメージです。

昔、ソニーが日本の企業としてあの時代に一代で世界企業になったのは、story teller、life style creatorだったからです。Steve Jobsも、56年の生涯をかけて物語を作った人です。その物語に登場する重要な要素として、Mac, iMac, iPod, iPhone, iPad等々が位置づけられいて、単に、優れたデバイスを作るだけの人だったら、こうはならなかったと思います。

我々がこれからやって行かねばならないのは、20世紀の成功体験を忘れ、21世紀の新しい経済モデルや生態系を生み出していくようなことだと思います。そしてそれが日本発で世界に貢献する新しい形として進化していくようなことだと思います。

昨晩、そんなようなことを以下で小倉淳さんと語りました。

http://www.ustream.tv/recorded/19714445

今年も、志を共有できる行動力の旺盛なチャレンジングな人達との出会いを大切にしていきたいと思います。

2012年1月6日金曜日

2012年が素晴らしい年になりますように

新年おめでとうございます。昨年は震災やそれに伴う原発災害等々で大変な年でしたが、今年はどのような年になるでしょうか?少しでもいい年になってくれることを祈ります。

我々が生きていく上では出会いというのが本当に大切ですね。リアルでもバーチャルでも日々多くの方々との出会いがあり、その出会いに支えられたり傷つけられたりしながら我々は生きています。

私の場合は、社会人になってからはソニーやそこでの仕事に関連した出会いの数々がありました。その後、ソニーを辞めてからは、グーグルとの出会いがありました。そして昨年は、今の新しい仕事を始めたが故の出会いが多くありました。ソニーを辞めていなかったらグーグルとの出会いはなかったですし、グーグルを辞めていなかったら、昨年出会った方々との出会いもありませんでした。そう考えると、人生というものへの興味は尽きません。

昨年の素晴らしい出会いの中のひとつに、K+の池田君江さんとの出会いもありました。数年前の渋谷のスパでの爆発事故に従業員として巻き込まれて脊椎を損傷され、それ以来車椅子で生活されている方です。その苦難を乗り越えるのにどれだけのご苦労をされたか、思い図ることすらできませんが、今は障害を見事に乗り越えて、「ココロのバリアフリー」という活動を推進されています。池田さんがおっしゃっていたことで「このような生活になって初めて見えてくることがたくさんある。そういう意味では、事故に感謝というのもおかしな話だが、その視点を大切にして生きて行きたい。」という言葉はとても心に残りました。もう一つ感動したのは、ご主人が常に傍らで本当に献身的に彼女を支えている姿でした。このお二人のエネルギーを以ってすれば、どんな困難も乗り越えて世の中に新しい希望の光を拡げて行かれるに違いない、と思いました。

テクノロジーはどんどん進んでいます。弊社にも昨年、筑波の山海先生のサイバーダイン社ロボットスーツHALテーブルインターフェースのデモに来てくださいました。また、事例としてふさわしいかわかりませんが、「アバター」という映画では、障害を持つ主人公がバーチャルの世界では健常者として活躍する姿が描かれていました。医学の世界でも、たとえば日本はiPS細胞の研究においては世界でもトップレベルです。今後、10年、20年の間に、テクノロジーや医療の進化によって人類の肉体的な障害を克服したり補完できる時代が来る可能性も高いと思います。

また、昨年、オランダの車椅子のアスリートが、自転車事故をきっかけに下半身の機能を取り戻した、という奇跡のような話も報道されていました。

希望を失わずに前向きに生きて行けば将来何が起こるかわかりません。池田さんとの出会いは、日頃見失いかけている多くのことにあらためて気づかせてくれる貴重な出会いとなりました。

2012年が素晴らしい年となるように、私も精一杯頑張りたいと思います。