2012年12月28日金曜日

年末のご挨拶

早いもので2012年も年末を迎えました。私も本日が今年の仕事納めです。
 
日本では一年の最後の月を「師走」といいますが、文字通りの慌ただしい日々が続きます。これは、いろんなことを年が変わる前にやり遂げてしまおう、という日本人の「けじめ」を大切にする精神性から来ているようにも思います。それに加えて、クリスマス商戦、年末の大売り出しなど、商売の面でも年の終わりはかき入れ時でもあり、多くの人達が本当に忙しく動き回っているように見えます。
 
その慌ただしい年末を終えて元旦を迎えた瞬間の静けさや清らかさは、日本人に生まれて来てよかった、と感じる時でもあります。日付が切り替わっただけで、まさに「動」から「静」へ世の中が一瞬で転換するように感じます。そして新年もまた、日本人のけじめを大切にする精神性から、初詣、初日の出、初夢、書き初め、仕事初め、大発会、、、等々、さまざまな風習があります。
 
年の瀬を迎えて過ぎ去った一年を想い、そしてこれから新しく始まる一年への決意や期待が交錯する師走の最後の日々は個人的にもとても好きな季節です。
 
本年も無事に平和な年末を迎えることができたことに心から感謝したいと思います。皆様におかれましても、素晴らしい年末年始を迎えられることを心よりお祈り申し上げます

2012年12月18日火曜日

新政権誕生

衆院選が終わり民主党が惨敗して自民党が圧勝、維新等も躍進しました。これは何より、3年間に渡って政権担当能力の無さを見せつけた民主党に国民が愛想を尽かした、ということだと思いますが、安倍さんの自民党が返り咲いたのは、「失敗者にセカンドチャンスを与えた」、という意味では悪くない選択なのだとも思います。安倍さんは明らかに政治家として一度挫折した人で、その人に再び信を託したのは、比較的敗者に冷たい国民性からすると、面白い選択とも思えるからです。しかし、逆に言えば、期待した民主党にも完全に裏切られて、ここは一旦、政権運営に手慣れた自民党に戻すしか他に手はない、という国民の絶望にも近いあきらめの選択なのだとも思います。
 
ところで、右傾化を憂える論調がありますが、私は軽々に右傾化という言葉を使うべきではない、という意見です。ナチスドイツや旧日本軍部等、国が乱れると右傾が始まる、というのは歴史の常ですが、現在の状況は、民主党があまりにも無能で外交面でも大きく後退し、特に鳩山さんの迷走で日米関係が大きく傷ついてしまい、その為に、中国やロシアや韓国に付け入る隙を与えてしまった、ということがまず背景にあるのだと思います。その為に、尖閣問題や北方領土問題、竹島問題が一度に再燃し、それを契機に、国民の国防に対する危機意識が高まった、ということです。そういう意味では、右傾化を憂える以前に、平和ボケしている我が国の国防に対する意識や領土保全に対する意識がようやく目覚めたに過ぎない、というレベルの話だと感じています。本来、国防や領土の保全は国のアイデンティティを考える第一歩ですから国民の意識が高まって議論が盛り上がるのはあるべき姿と言えます
 
いずれにしても、ようやく3年余りの政治の混迷に終止符が打たれて、新しい国造りが始まるこのタイミングはとてもエクサイティングですし、誰にとっても他人事ではありません。今後の政権運営に注目して行きたいと思います。

2012年11月29日木曜日

21世紀の新しい秩序とは?

混迷を極めた民主党政権にようやく一旦終止符が打たれることになったのは喜ばしいことですが、次の政権を誰に託するのか?ということを考えるとはなはだ悩ましいですね。民主党の再登板は勘弁してもらうとして、かといって日本維新の会をはじめとするいわゆる第三極でははなはだ危なっかしいですから、やはりここは一度自民党政権に戻すしかないのだろうか、、、などと自分の一票をどう行使すべきかを考えあぐねています。

ところで、今、日本だけでなく、世界中が混迷の度合いを深めているように見えますが、これはマクロに見ると、おそらくネットやクラウドやソーシャルの登場によって、20世紀の秩序や常識が組み替えられるフェーズに入り、かといって、21世紀の新たな秩序や常識が着地点に至っているわけでもないために、世界中が混乱状態に陥っているのではないかと感じています。「政党政治」とか、「民主主義」とか、「国家」とか、「権威」とか「エスタブリッシュメント」などといったいわゆる20世紀的な概念の意味が大きく変わりつつあるのを感じます。ネットの発達によって、無限のコンピューティングパワーが安価に個人に解放される時代となり、個人がエンパワーされ、自分のアジェンダで活動し易くなったことにより、自分自身が所属するものへの依存度なども変ってきているのだと思います。ネットの中にボーダレスな地球がもう一つ出来上がっているような時代には「クラウドのリアルタイム性」ということがキーワードになっており、あらゆることが瞬間的に世界へ伝搬し、平準化され、ネットがなかった時代には他人事だったことが直ちに自分事になるような時代に我々は生きています。WikiLeaksのようなものも、単純に「悪」とも「善」とも論じることが出来ないようなネットの時代の新たな概念と言えますし、Googleにしても、もともと物議を醸すようなことをやり続けながらも、今や我々の生活になくてはならない存在に至っているわけです。

そう考えると、このような秩序の組み換えの時期、世の中が混迷を極めている時期というのは、実は大きなチャンスでもあると感じています。20世紀まで、西欧的な発想やスタイルが中心に組み上げられてきた価値観や秩序の中で、どちらかというと肩身の狭い思いをさせられてきた日本的常識や日本的スタイルの中には、実は新しいグローバル・スタンダードとして世界の常識にして行った方が今後の世界貢献に繋がるようなことがたくさんあるのではないでしょうか?震災時の日本人の行動パターンに多くの外国人が賛辞を送ってくれたのも記憶に新しいところです。日本人は戦後教育の中で、日本的なものを否定するような風潮や論調に過度に洗脳されて来ました。先日、アメリカ人の知り合いと話していたら、「日本人と話すと自国の悪口ばかり言うが、他の国の人達は自国の自慢しかしない」、と言っていました。そういう面も「謙譲の美徳」という意味合いでは日本人のいいところなのかもしれませんが、本音で自国の悪口を言っているとすれば大いに問題です。これからは、自国に自信を持ち、そのいいところをもっと積極的に世界に伝えて行く態度や行動がより重要と感じます。これまで、グローバライゼーションというと、一方的に世界の常識に自分を合わせる、というようなニュアンスが強かったように思いますが、日本人は日本人であることによってしか世界貢献出来ないわけですし、自国に根差したアイデンティティを確立した人こそが真の国際人と言えるのだと思います。

このような時代に生きる意味ということをよくよく考えながら今回の選挙に臨みたいと思います。

2012年11月13日火曜日

硫黄島

今年も早いもので年末が近づいて来ました。悔いのない一年となるように残りの日々を大切に過ごしたいと思います。

先日、息子が「硫黄島に行く」と突然言い出し、自衛隊の軍用機に乗って硫黄島に行ってきたので少し驚きました。大学生なのですが、朝比奈一郎氏が主催する青山社中のリーダー塾というのに通っているようで、そこの企画で慰霊祭に参加する機会を得たようです。

戻ってきてから、撮ってきた写真をいろいろ見せながら話を聞かせてくれましたが、太平洋戦争中の激戦の地、多くの日本兵とアメリカ兵が犠牲になった地に赴いたことによって、彼なりにさまざまに思いを巡らせたとみえて、言動が少し変化していました。

硫黄島といえば、守備隊の栗林忠道中将が有名で、クリント・イーストウッドの映画「硫黄島からの手紙」では渡辺謙が演じて話題となりましたが、この栗林中将は抜きん出たリーダーとしての力量のあった人と言われています。硫黄島が陥落すると、B29によって直接東京が空襲の脅威に晒されるため、首都東京を焼土としないために硫黄島を死守することが栗林部隊の責務でした。当初、米軍は5日で硫黄島を陥落させる予定でしたが、この栗林中将の卓越した戦術と実行力、統率力によって守備隊は最後まで徹底抗戦して、実際には陥落まで36日間を要しました。制海権、制空権を確保し、火力兵力その他物資において圧倒的に優勢であった米軍の死傷者は日本側の死傷者を上回ったと言われています。上記映画は日本側からのストーリーとアメリカ側からのストーリーの二部作となっていましたが、原作者のジェームズ・ブラッドリーは、栗林中将を「米軍を最も苦しめ、それゆえにアメリカから最も尊敬された男」と称賛しています。

米軍が上陸した浜には、「名誉の再会(REUNION OF HONOR)」と呼ばれる石碑が建てられており、山側の面が日本語、海側の面が英語で、二度とこのような悲劇を繰り返してはならないということと、日米の平和と友好を誓う文字が刻まれているそうです。

今の平和と繁栄の背景にはこのような歴史があり、多くの人達の犠牲や家族の悲しみなどがあったことを忘れてはならないとあらためて思いました。

2012年11月5日月曜日

瀬戸内グッドライフツアー

先日、仕事を通じてお知り合いになった村山昇作氏がJTBやANAや百十四銀行の協力を得てアレンジされた「瀬戸内グッドライフツアー」にお誘いいただき2泊3日で高松市に行って来ました。村山氏は日銀ご出身でその後帝國製薬(株)の社長に転出され、現在は先日ノーベル賞受賞が決まった山中先生のiPS細胞の事業化に取り組むiPS アカデミアジャパン(株)の代表取締役社長をしておられます。また、百十四銀行の顧問や、完全無農薬、無化学肥料、無畜産系肥料の「ムムム自然栽培農場」の運営にも携わっておられたり、天体望遠鏡のコレクターとして社団法人天体望遠鏡博物館代表も勤めておられるという、極めて多彩で大変にエネルギッシュな活動家でそのライフスタイルには大いに触発されました。もともと京都西陣のご出身と伺っておりますが、日銀時代に高松支店長としてこの地に赴かれ、高松市や香川県との縁を深められたそうです。

 
 
今回のツアーでは、村山さんのお知り合いの方々の私邸を巡る、という大変にユニークなツアーを企画され、(株)ランゲージハウス社長のペイジ氏のお宅や、JR四国会長の松田氏のお宅、香川証券(株)社長の中條氏のお宅を始め、穏やかで美しい瀬戸内の海や島を臨む素晴らしい環境の中で、仕事や人生を大いに謳歌しておられる皆さんに多数お会いすることが出来ました。それぞれの皆様のこだわりのライフスタイルはまさに人生の達人ともいうべき刺激に満ちたもので、やはり毎日豊かな自然に身近に接する生活こそ本来の人間らしい生き方ではないかと思い知らされました。
 
 
 
また、私邸以外では、ミシュランも三つ星を付けた名勝「栗林公園」、日系2世の家具デザイナー ジョージ・ナカシマの記念館や桜製作所なども訪れました。 ツアーの最後では、上記「ムムムの農園」に豊かに実ったナスやキュウリやイモなどをみんなで収穫して楽しみましたが、ナスやキュウリなどはそのままその場でいただいてもみずみずしくて甘く驚きました。村山さんはここで採れる野菜しか召し上がらないそうですが、とても健康になられたとおっしゃっていました。

  
 
自分の残りの人生を考える上でもいろいろと参考になる実り多い旅となりました。

2012年9月26日水曜日

産業の新陳代謝

仕事柄、長くシリコンバレーの人達と接する機会が多く、また彼の地に通っていたような時期もあった経験から言うと、日本の産業界は圧倒的に新陳代謝のスピードが遅いですね。まず、シリコンバレーにいるようなエンジェルやVCが不在でリスクマネーがまったく回っていません。リスク=オポテュニティに投資するのではなく、リスクがないとわかって初めて投資するような似非投資家が多い印象です。インキュベーションファンドなどといっても、投資額が¥300万とか¥500万とかの小口のものばかりです。リスクがないものに少額投資したところでリターンもたかが知れています。一方で、20世紀の経済発展を牽引してきた大企業の中にはさすがに劣化が目立つところも増えており、21世紀の成長戦略を引き続きそういう企業にばかり託し続けようとするのも無責任で酷な話だと思います。このような我が国のビジネス環境を取り巻く現実については、自ら起業してみることによっても目の当たりにさせられてきました。
 
今の日本に必要な長期改革を2つだけ挙げるとすれば、①産業の新陳代謝を促進するインフラや仕組みの構築と②教育改革であると思っております。世界銀行の調査によると、日本は起業のしやすさという項目で183カ国中107位、課税に関する項目では120位、許認可取得については63位だそうです。起業行為を始め、もっとチャレンジする個や斬新なエネルギーを積極的に応援する環境を整えて行くことはまさに国家の急務と感じております。
 
そのような問題意識から、自分達でできることをまずは始めてみよう、という思いで、このたび、果敢に挑戦する人達を応援するプラットフォームCOUNTDOWNを新たに立ち上げました。これは、所謂クラウドファンディング、ソーシャルファンディングと呼ばれる新たなチャレンジ支援インフラ事業で、弊社の社是である「日本発世界」を基軸に、グローバルな挑戦を志す人達を応援するためのグローバルプラットフォームです。すでに運営を続けている「日本発世界」の越境eコマースALEXCIOUSの事業とも密接な連携を図ることが出来るサービスとして設計しています。
 
このような場が、今後の日本の新陳代謝を促して行く上での一助になれば、という思いで熱い運営をおこなっていきたいと思っています。

2012年9月23日日曜日

ENJOY JAPANESE KOKUSHU

内閣府国家戦略室の「ENJOY JAPANESE KOKUSHU(國酒を楽しもう)」プロジェクトの推進協議会メンバーとして計4回の会合に出席し、先日、古川大臣宛に「國酒等の輸出促進プログラム」を提出して推進協議会としての活動が一旦終了となりました。プロジェクトの名称からはなんだかお気楽な会合のようですが、実際は、国内消費が縮退の傾向にある日本酒や焼酎のグローバルマーケット開拓を推進するための真剣かつ活発な意見交換の場となりました。お酒の専門家でもない私は、越境の電子商取引を推進する立場から参加のお声掛けをいただきましたが、これを機会に日頃感じていることについて忌憚のない意見をいろいろと述べさせていただきました。詳細は、http://www.npu.go.jp/policy/policy04/archive12.html をご参照ください。
 
工業製品で世界の経済大国に上り詰め、made in Japanブランドを確立した我が国ではありますが、それもすっかり昔話となってしまい、国際社会における我が国の存在感はここ最近、急速に薄らいで来ています。特に2011年3月には未曽有の震災にも見舞われ、まさに歴史的な国難ともいえる状況に直面する中で、私が在籍した家電産業を始め、国家の経済発展を牽引してきた主力産業分野においても苦境が目立っています。このテーマについては、このブログでも幾度となく触れてきました。
 
まさに今、これからの新しい産業の機軸を打ち立てねばならない重要な局面にありますが、我が国にとって可能性のある分野は20世紀後半に頑張った工業製品の製造業以外にもエネルギー分野や医療分野など、たくさんあると思います。いわゆる生活文化産業を輸出産業に転換するというテーマもその中の一つですが、残念ながらフランス、イタリアなどに比べると輸出産業としての本格的な展開が遅れていると感じています。今後、酒、食、ファッション、観光、美術、芸術、工芸品などのマーケットを世界を意識して広げていく努力は我が国の国家戦略としても非常に重要なものと感じており、私の現在の活動もこの分野に深く関わっております。

2012年8月24日金曜日

大自然に浸りながら人の縁を思う

今週は遅い夏休みを家族と共にアメリカのニューメキシコ州の山の中で過ごしています。学生時代にイリノイ大学に留学した時に知り合ったこちらの友人が現在ニューメキシコの州都サンタフェに住んでいて、そこから2時間くらい行ったところに広大な土地を確保してプライベートリゾートを営んでおり、そこに招いてくれました。プライベートリゾートと言っても、20棟ほどの古いログキャビンを買い取ってそこを手作りで再開発したような質素なところなのですが、渓谷や森林や野生の動物など、アメリカの大自然を満喫できる素晴らしいところです。

彼と知り合ったのは私が21歳の時でしたが、お互いに結婚した頃から交流が途絶えてしまっていました。しかし、最近になって、facebookやLinkedInによって交流が再開し、昨年、彼が娘を連れて日本に遊びに来た時に25年ぶり位に再会しました。何と、今年17歳になった娘さんがNarutoやOne Pieceなどの日本のコミックやアニメに触発されて大の日本ファンとなり、日本語を勉強するサマースクールに参加するということで、アテンドして来日したのです。

お互いに、順風満帆というよりは紆余曲折、チャレンジ続きの人生なのですが、こうして長い時を経て若い時の友人に再会できたことは、自分自身を再発見したりこれまでの人生をいろいろと振り返ることにもなり、今回もこちらに来て大いに旧交を温めることが出来ました。

人の縁ということや、大自然の恵みの大切さをあらためて深くかみしめる忘れ難い夏休みとなりました。身も心もリフレッシュして来週からはまた仕事に専念したいと思います。

2012年8月11日土曜日

8月に思う

毎年、8月はどうしても歴史に思いを寄せる月となる。6日が広島の原爆記念日。9日は長崎の原爆記念日。そして15日は終戦記念日である。日本には長く平和な時代が続いてきたが、体験しているしていないに関わらず、この国が壮絶な歴史を刻んできたことを忘れるわけにはいかない。そして今は、政治を見ても、経済を見ても、まさに混沌の時代である。太平洋戦争後、日本は直接戦争に巻き込まれることは無くなったが、一方で国防に関してめっきり疎い国となってしまった。防衛大臣が目まぐるしく代わる中、沖縄の米軍基地に関する混乱はオスプレイ導入の是非をめぐる議論に発展し、中国との間では尖閣列島の問題も再燃して予断を許さない。また、昨年3.11の大震災以降、原発災害への対応を巡る大混乱も、この国のリスク管理能力の低さや甘さを白日の下に晒した。そんな中にあって、今年のロンドンでのオリンピックも大詰めを迎えているが、ここにはアスリート達の純粋な力の勝負があり、見る者の胸を打つ。勝つことの難しさ、さらには勝ち続けることの難しさを体を張って教えてくれる選手達の活躍に目が離せない。結局、国の強さは国民一人一人の強さに帰結する。一人一人が目標を持ちそれに向かって全力で取り組む、そしてそういうチャレンジャー達を周囲が支援したり応援する、ということが国の強さや秩序を取り戻していく上での基本であるように思う。オリンピックの勝者へのインタビューを見ていると、勝者たちは例外なく開口一番周囲への感謝の言葉を口にする。チャレンジは一人の努力では成功しない、自分の努力や精進に加えて多くの周囲のサポートが目標達成にとって欠かせないのだいうことを痛感しているからだろう。アスリートだけでなく、我々も今から4年後の自分自身の目標を明確にしてそれを周囲に公言し、多くのサポーターを集めながら目標達成に向けて動き出すことがこの国を良くしていくための第一歩になるような気がする。

2012年7月6日金曜日

加齢は進化

人は皆平等に歳を取る。どんな高齢者にも若い時代はあり、どんな若者もいずれ歳を取っていく。ひとつひとつの年齢は一度しかないかけがいのない年齢なのだからその年齢を楽しんで精一杯生きることが大切だと思う。

よく「自分はまだ若く未熟者だから、、、」とか「いい歳をして、、、」「もう歳だから、、、」などと年齢を言い訳にする人がいるが、 年齢を言い訳にしない生き方がいいと思う。 また、若い人は年配の人達から学べることがたくさんあるし、逆に年配者は若い人達から学べることがたくさんあるので、出来るだけ世代をまたがった交流を心掛けることも大切だと思う。

一般的に、歳を取っていくと肉体的にも精神的にも衰えて行くと言われているが(認めたくない?)、年齢に負けないようにチャレンジするのはとてもいいことだと思う。そういう意味でAnti Agingという言葉もとてもいい言葉だと思う。歳を取ることに対するネガティブな言葉やイメージをポジティブなものに変えるためには、言葉の言い換えをするといいと思う。たとえば、「老化」は「進化」や「成熟」でもある。

昔、クリント・イーストウッドがテレビのインタビュー番組で、「歳を取るということはよりいい人間になるということだ」とさらっと言うのを聞いてなんてかっこいいんだろう、と思った。 Gran Torinoは、若者を更生させる老人の話だったが、いい映画だった。そう、歳とともに老化して衰えて行く人生ではなく、死ぬまで「よりいい人間」を目指して進化し続ける人生を送りたい。

そんなことを思っていたら今月は自分の誕生月であることに気付いた。「進化」を心掛けたいと思う。

2012年7月1日日曜日

シンプル

少し前に、最近出版されたKen Segall著「Think Simple」(NHK出版)を読みました。アップルやスティーブ・ジョブズと長年一緒に仕事をした外部のクリエイティブ・ディレクターがジョブズのスタイルの特徴を10のキーワードでまとめたものですが、これを読んでいると、あまたの日本の大企業が駄目になっていく理由がクリアに説明されているようで非常に面白かったです。日本の大企業だけでなく、マイクロソフト、インテル、デルなどが最近精彩を欠くようになってきている理由も同じです。

その理由を一言で言うと、我々は何事も、物事を複雑にしていく傾向があり、企業も大きくなるにしたがって、シンプルさをどんどん失っていってしまうということです。一方で、ジョブズのスタイルはあくまでもシンプルさを追求することに一切妥協しなかった、ということをさまざまな具体事例を盛り込んで余すことなく説明しています。私もソニー時代、グーグル時代の経験に照らし合わせてまさにその通りと感じました。たとえば、家電量販店に行って、PC売り場にでもTV売り場にでも行くと、各社のあまりにも多くのモデルが並んでいて一体どれを買っていいか迷った経験は誰にでもあるでしょう。オンラインショッピングの場合も同じです。それに対して、アップルのノートPCはMacBook ProとMacBook Airしかなく、それぞれに画面サイズ等のスペックの違うモデルが2モデルずつあるだけという実にシンプルなラインナップを堅持しています。誰もがアップルの成功をうらやみ、このようなモデル数の絞り込みを正しいラインナップ戦略と理解しながらも、どこも決して同じようには出来ないのです。あるいは、大企業の戦略会議などでは、各部署から代表者を出したり、さまざまな人達への配慮から、あっという間に大人数の大会議になってしまいますが、そうなると議論に時間ばかりかかって一向にデシジョンやアクションに繋がらない、といった経験も誰にもあるでしょう。まるで今の民主党のようですが(笑)。。。ジョブズのスタイルは、会議のメンバーはその会議にとって決定的に重要な少人数しか招かない、観客のような人が混ざっていたら退席させる、という点でも徹底していたようですが、これもわかっていても普通の組織ではなかなかできないことだと思います。

勝つためのセオリーなど、本来は実にシンプルなものだと思います。そのシンプルなセオリーを厳格に徹底して実行できるかどうか、ということにすべてがかかっているのです。今決めねばならないことを明日に伸ばす、すぐに返事をしなければならない案件を放置する、会議に余計な人を混ぜる、はっきり言えばいいことを婉曲的に言う、最初から一つだけ作ればいいものをバックアップも含めて複数作る、などなど、こういう行為が物事をどんどん複雑にしていってしまって、気が付いたら時間やお金や大事な経営資源をどんどん無駄にしていってしまうのです。シンプルさの追求とは当たり前のセオリーでありながら決して皆が出来ることではないのです。

2012年6月6日水曜日

音禅法要

昨年、同志社大学経済学部の八木匡教授のご紹介でお目に掛かって以来、懇意にさせていただいている世界的音楽家のツトム・ヤマシタ氏。クラッシック、ジャズ、ロック、フュージョンのそれぞれの世界で頂点を極め、究極の音を求めてたどりついた石の音色で「音禅法要」を生み出されました。 ローリング・ストーンズに誘われた日本人という逸話の持ち主でもあります。京都ご出身のヤマシタ氏が、禅寺の名刹「大徳寺」で毎年開催されているこの「音禅法要」のイベントが、今年は6月2日(土)に執り行われました。私は初めて伺いましたが、コンセプト的には弊社サイトALEXCIOUSでもご紹介している「Walking on Sound」に近いものでした。

今年のテーマは「東日本大震災の復興への祈り」。イタリアとスイスからグレゴリオ聖歌隊の男性歌手二名を招聘し、グレゴリオ聖歌、般若心経をはじめとしたお経の読経、和笛と和太鼓、ヤマシタさんのオリジナル打楽器であるサヌカイトの演奏などが見事に融合した、非常に幻想的かつ感動的なイベントでした。キリスト教と仏教のコラボに少しも違和感を感じることなく、むしろ、共通するものを多く感じました。おそらく、世界的に見ても、このような異教間のコラボや、宗教と芸術と音楽を組み合わせたイベントは稀有だと思います。この見事で類まれなパフォーマンスを構想し具現化されたヤマシタ氏の天才的な才能にあらためて畏敬の念を覚えずにはおれませんでした。

招待制のイベントでしたが、集まった聴衆は300名ほどということで、京都市長の門川大作氏もいらしていました。門川氏とは、グーグル時代にストリートビュー・スペシャルコレクションのイベントを二条城で開催した時にもお目に掛かったのですが、その時のご挨拶のスピーチで、「Google meets Kyoto」というテーマで、「一見ミスマッチに見えるものが実は最適な組み合わせである」、という話をしたことを思い出しました。「人類の知の保全と共有」という観点からは京都の国宝級の神社仏閣をクラウド上に永久保全するというのは極めてGoogleの本質に沿った社会的意義の深い活動だと感じたものです。

今回は「Christianity meets Buddhism」とも「Integration of the life and eternity」とも言える不思議な感覚を味わいながら、東北の大震災で犠牲になられた方々へ思いを巡らせ、復興への祈りを捧げる敬虔なひと時となりました。

2012年4月30日月曜日

新・脱藩のすすめ -坂本龍馬の背中-


「変革は辺境から」という言葉がある。世の中の秩序が大きく変わる時、その源流は反主流の中から発生することが多い。我が国における明治維新という歴史的なパラダイム転換は、その前夜、時代の先を見据えて危機感を強めた若者達の体制離反、いわゆる「脱藩」という行動を促した。脱藩した憂国の志士達、すなわち命がけで体制離反した人達のエネルギーの爆発が古い秩序を打ち破り新しい秩序を構築する大きな原動力となった。

先日、所用で鹿児島県を訪れる機会があった。旧島津家別邸「仙厳園」から、目の前で噴煙を上げる桜島を望むと、幕末に日本の歴史を動かした旧薩摩藩が何故大きな経済力と軍事力を持つに至ったかを、地政学的観点からすんなりと実感出来た。当時は、欧州から南周りで海洋をたどると、最初に到着する日本の地はまさに薩摩であった。結果的に、永く薩摩は琉球や中国、欧州などとの海外交易の最前線として栄え、海外の最先端の技術や最新の文化が最初に伝来する地となった。江戸や京都などの日本国の中央・中枢から遙かに離れた辺境の地に、大きな変革のエネルギーが蓄積され続けていたのだ。

そして、そこから太平洋岸をやや北上した位置に、高知県、旧土佐藩が位置する。今も多くの日本人を魅了してやまない坂本龍馬は、ここ土佐藩の下級武士の次男として誕生した。私の龍馬に関する知識は、もっぱら司馬遼太郎の「竜馬がゆく(原題通り)」が下地となっているが、龍馬の一番の魅力は、やはり抜きん出た時代感覚の持ち主であったということだと思う。世の大半の人達には、今現在しか見えていなくて、発想も行動もそこからの積み上げになりがちなのに対して、龍馬は、これから進むべき世の中の方向性やそこから拡がる未来への想像力に優れ、想像した未来から逆算して今の自分の行動を決める、という演繹的な生き方を貫いた。理想主義者でもあったかもしれない。龍馬は若い時に、「世の人は我を何とも言わば言え 我が成す事は我のみぞ知る」という有名な歌を詠んでいるが、これなどは、Steve Jobsが遺した言葉、「Your time is limited, so don't waste it living someone else's life」にも通じるものがある。

考えてみると、龍馬は実にイノベーティブな生き方をした人であったともいえる。そもそもイノベーションには優れた想像力や演繹的な思考能力が求められる。たとえば、ライト兄弟の飛行機だって、当時の常識や論理の積み重ねだけでは生まれなかったはずである。「機械が空を飛ぶことは不可能」という結論で終わらせてしまうのではなく、「飛べるはずだ、飛ばしてみせる」と発想し、演繹的に考え、人の目を気にせずに行動したからこそ成功した。龍馬の発想や行動のパターンにもこれに近いものがあったように思う。

龍馬は革命家としてだけではなく、商人としての才覚にも秀でていた。亀山社中、後の海援隊は、龍馬が作った私設軍隊兼日本初の株式会社にあたるのだと思うが、このような形で浪士を組織化し、活動の為の財力と軍事力を確保した手腕も実に見事であった。だからこそ、薩摩も長州も土佐の一脱藩浪士に過ぎない龍馬の言うことに耳を貸さざるを得なかったのであろう。どんなに正論を主張しても、口先だけだったら相手にされない。理想主義者であると同時に、したたかな現実主義者としての面を併せ持っていた。多くの浪士や支援者を集め、遂には薩摩や長州をも動かして時代を変える求心力となり得るに至った多くの才に恵まれていたのである。

龍馬の生きた時代を現代になぞらえると、今の我々は、それこそ明治維新や太平洋戦争後に匹敵するくらいの時代の大転換期に直面していると感じる。高度成長期の栄華はとっくに過去の話となり、10年、20年の単位で国の劣化が緩やかに進んで来た。特に、インターネットの出現やクラウドコンピューティングの発達、新興アジア諸国の台頭等によって産業構造の根底が激変し、政策、教育、産業育成、大企業の経営改革など、多くの面で後手に回った我が国の国際的なプレゼンスは下がり続けている。

そんな中で発生した東北の大震災に何らかの意味を見い出すとすれば、日本人全員を覚醒させ、待ったなしの行動を促すきっかけになったということだろう。国家中枢の機能不全や東電の無責任体質を嫌というほど見せつけられ、原発の安全神話も完全に崩壊した。今こそ、20世紀的な価値観や、古い社会常識を無定見に受け入れた生き方を脱ぎ捨て、来るべきこれからの未来をまっすぐに見据えた新たなチャレンジをすべきタイミングだ。捨てたくない物を捨てることに価値があると気が付く為には、まず捨てないと始まらない。時代の転換期であることを見逃して従来の価値観に囚われて判断していては将来を見誤ることにもなる。そもそも、人は、ところどころで人生をリセットしたり、フルモデルチェンジをするのが望ましいと思う。結局、人の生き方を一番縛っているのは、過去の成功体験や周囲に刷り込まれた社会通念などであるからだ。成功体験は我々の成長に欠かせない反面、逆に成長の大きな足枷にもなってしまうし、地位や名誉や世間体など、余計なものに執着して変化やチャレンジを疎んじる原因にもなりかねない。

龍馬の時代の脱藩という行為を、今の時代に置き換えると、自分が長年所属してきた組織を飛び出す、たとえば会社を辞める、という行為がそれに近い。今回の震災をきっかけに、勤めていた会社を辞め、自分がもともとやりたかったことや社会的意義を感じることにチャレンジしている人に少なからずお目に掛る機会があるが、どの人も実に生き生きとしている。

今の時代は無限のコンピューター資源を手元のスマホなどから個人が気軽に無料で使える実に恵まれた時代である。デジタル・マーケティングやオープンソース等の発達で起業のハードルも下がっているし、クラウド・ファンディングや、クラウド・ソーシングなど、インターネットに繋がった世界中のマスの力を借りる為の手段も次々に生まれている。龍馬を始め、維新前夜の憂国の志士達から見れば、びっくりするようなパワフルで恵まれたインフラが整っているのだ。

福沢諭吉は、江戸時代から明治時代に生きた自分の一生を振り返り、「一身にして二生を経る」という言葉を残したが、変化のスピードが速い現代は「一身にして多生を経る」ことが出来る時代であると思う。惰性や妥協を排し、時代の恩恵を活用した新しい生き方にチャレンジすればその数だけ新しい世界を広げる好機なのだ。既存組織や既存秩序の中で息苦しさを感じている人達は、龍馬のように思い切って行動してみるといいのではないだろうか?結局、国も大企業も頼りにならない時代には、詰まる所、自分自身の頭と感性でこれからの時代の方向を見据え、自らのアジェンダで行動するしかない。自ら考え行動する個人が数として増えて行くことにより、それがやがて新しい価値や秩序を生み出し国を再生させる大きな力になって行くと信じる。

文藝春秋スペシャル2012季刊夏号に寄稿した原文です。


2012年4月29日日曜日

日本製造業の復活に関するFAQ


昨晩のNHK BS1の番組で問いかけられた質問は、よく繰り返されるFAQでもありましたので、私見を以下にまとめて掲載させていただきます。

Q1:日本の製造業は何故現在のような苦境に追い込まれたのでしょうか?

まずは外的な要因が大きく、それを整理すると、大きく3つあるのではないかと思います。一つ目は、インターネットやクラウドコンピューティングの発達によって、あらゆる製造業にとって、製造する対象となるもの、たとえば家電産業であれば、テレビだとか、パソコンだとか、携帯電話などの定義が変わってしまったということ。作る対象が数年前までのものとはまるで別の物に変ってしまったのです。そして二つ目は、やはりインターネットやクラウドの発達によって、如何に製造プロセスや生産管理プロセスにそれら最新のIT技術やコンピュータの力を上手く活用するかが勝負を決めるようになった、ということ、もはやトヨタの「カンバン方式」などで差別化できる時代ではなくなりました。そして三つ目が、デジタル化による過当競争やいわゆる「ムーアの法則」によって商品のライフサイクルが極端に短くなった、ということです。これらのメガトレンドの激変によって、それまでの日本のメーカーの勝ちパターンが通用しなくなってしまったのだと思います。また、一方で、これらの変化に素早く追随して新しい勝ちパターンを生み出すことも未だ出来ていない、ということだと思います。

Q2:大幅赤字を発表した現在の日本家電産業の苦境は予測できたことなのでしょうか?

はい。昨年は、日本では大きな震災があり、またタイの洪水やヨーロッパの信用不安や急激な円高など、業績を悪化させる特殊な要因や一時的な原因が多く発生しましたが、そもそも、上記の通り、インターネットなどの発達によって家電産業が大きく変遷しつつあるという構造的な背景があり、その中で存在感を圧倒的に強めたのは、もともとパソコンメーカーだったアップルや、インターネットの世界を制したグーグル、グローバルなSNSを創り上げたフェイスブックなどです。こういう人たちが家電産業を大きく変遷させるキープレーヤーとしても大きな影響力を持つに至っていて、彼らは日本の家電メーカーとは仕事のスタイルやスピード、モノ造りに対する考え方やアプローチなどが本質的に違います。これらシリコンバレーの人達が次々に生み出す新しい流れに素早くかつ貪欲に追随して行ったのが、現在、経済成長のキャッチアップフェーズにいる台湾や韓国や中国のメーカーだったと思いますが、日本はなかなか過去の勝ちパターンを清算して新しい勝ちパターンを創ることが出来ずにいましたから、現在の状況は以前から懸念されてきたことが一気に表面化した事態とも言えます。

Q3:韓国企業がグローバル化で成功し、日本がうまくいってないのは何故でしょうか?

間違ってはいけないことは、日本は一度大成功した、ということです。日本は世界一高品質な工業製品をたくさん作って、made in Japanを世界ブランドに育て上げた輝かしい過去をもっていますし、made in Japanブランドは今でも十分に通用すると思います。問題は、高度成長期を謳歌した後、インターネットやクラウドコンピューティングの発達によって世の中が様変わりしてしまったことに対して、本来の持ち味であった、成長へのハングリーさや、変化へのスピードを失ってしまった、というところにあると思います。韓国に比べると国内市場が十分に大きくて内需中心でやれた時代が長く続いたのも急速なグローバル化が進む中で出遅れた要因の一つでしょう。また、韓国の場合は1997年のアジア金融危機で一度国が破綻仕掛け、そこから、国が強いリーダーシップを発揮して、国内メーカーの統廃合を進め、家電や自動車やエネルギーなどの重点産業領域での国際競争力を国策として育成した、ということもあったと思います。日本の場合は決定的な危機に直面しないまま、じわじわと競争力を失って行った、という構図もあったので、まさに昨年の震災によってどこまで本気で危機意識を持つに至ったか、ということが今後を決めて行くことになるでしょうね。

Q4:日本メーカーの巻き返しというのは可能なのでしょうか?

既に抜かれてしまったような分野で巻き返すことは簡単ではないと思います。中途半端なやり方で巻き返すことはできませんので、投資の規模とかスピードで圧倒的に上回るやり方をとらないと当然無理だと思います。一方で、日本は今後、自分達の強みをどこに求めて行くのか?という根源的な問いに対する答えを早く作らねばならないと思います。単に今までの延長線上で家電産業や自動車産業を続けていくのではなくて、5年後、10年後、20年後の世の中にどのような新しい価値を生み出していくのか、ということをまずビジョンとして創り上げる必要があると思います。明確なビジョンがなければ成長戦略も作れず、思い切った投資も出来ないし、スピードも上がらないと思います。

Q5:日本からは何故アップルやグーグルのような会社が生まれてこないのでしょうか?

私はその質問を受けるといつも困惑します。それは、私自身が学校出てから長くソニーという会社で働いていたためだと思います。昔のソニーという会社は「人がやらないことをやる」「世界で最初のことをやる」という気質の強い会社で、結果的にはトランジスターラジオとか、トリニトロンテレビとか、ホームビデオとかウォークマンとかプレーステーションとか、まったく新しい家電商品を生み出してそれら画期的な商品を次々と成功させて世界のソニーと言われるようになった会社なんですね。良く言われることですが、実際にアップルを作ったスティーブ・ジョブズはいつかアップルをソニーのような会社にしたいと本気で思っていた時期もあったようですし、ソニーの創業者の一人である盛田昭夫さんとは個人的に親交も深くてとても尊敬もしていたようです。ですから、日本から、アップルやグーグルのような企業が生まれない、という見解は間違っていて、そういう会社が生まれる素地はちゃんとある、と思った方がいいと思います。ただ、問題は、ソニーの後に続く会社がなかなか出てこない、いつまでも20世紀に誕生した大企業頼りの産業構造がなかなか変化しなくて、産業の新陳代謝が遅い、ということだと思います。特にインターネットの世の中になってからはそれが顕著だということだと思います。

Q6:音楽配信でソニーは何故アップルのリードを許してしまったのでしょうか?

アップルがやったことは、音楽を聴くためのまったく新しい生態系を創り上げた、ということです。確かにソニーも音楽をネットワークで配信する時代が来ることを早くから予測してその為のデバイスを創るところまでは先行していたと思います。しかしながら、生態系を作り直して、音楽を聴く環境そのものを一変させるためには、単にデバイスを開発するだけでは無理で、多くの音楽レーベルなども巻き込んで音楽配信の仕組みそのものを新たに構築しなければなりません。そういう総合的な取り組みにおいては、デバイス側やレーベル側の様々なプレーヤーの思惑やエゴを超越したリーダーシップや調整力が求められますが、ソニーの場合は、自分の内側にエレキも音楽コンテンツも両方持っていたことが逆に災いして、両者の利害調整がうまくできなかった、ということが一つの要因としてあると思います。それ以外には、当時ソニーはミニディスクという新しいメディアに移行させようとして長年投資を続けていたとか、自分達独自のオーディオ圧縮技術やコンテンツ保護技術にこだわり過ぎた、という他の要因もいろいろとあったと思います。

Q7:メイド・イン・ジャパン復活のカギは何でしょうか?

まず、内需先行の発想を止める、ということだと思います。従来の日本企業の典型的なパターンは、まず国内マーケットで成功させて、その後、海外進出する、というものでした。しかしながら、それは言ってみれば20世紀型の古いスタイルです。今はインターネットで世界中の20億人以上の人達が繋がっている時代ですし、フェイスブックだけでも9億人のユーザが世界中にいて、日々これらの数は増え続けています。ですから、極端に言えば、国内を単位として発想したりアプローチすることを止めて、最初から地球単位で発想したり行動したりすることがまずは何よりも大切なのだと思います。すなわち内需と言っても、日本の内需ではなくてフェイスブックコミュニティの内需を最初から狙う、というような発想が大事だと思います。

2012年4月27日金曜日

イチロー選手の資質

前回のエントリーの続編のような記事を以下のブログで見つけたので転用します。やっぱり思った通りですね。

http://1minute.raindrop.jp/?p=6858

やはりプロとして超一流ですね。

2012年3月30日金曜日

プロフェッショナルとは?

スタートアップは悲喜こもごもだが、いつも思うのは、トンネルに入っても前に進んでいる限りは必ずいつかは抜ける、ということである。我々もご多聞に漏れず、既にいくつものトンネルをくぐってきた。しかしながら、並の人は、トンネルに入ると、暗くなって(笑)、前も見えないし、すぐに抜けるトンネルなのか、長く続くトンネルなのかがわからずに不安になったり、弱気になったり、愚痴を言ったり、右往左往したりする。しかし、そういう時に大切なスタンスは、平常心というか、「プロフェッショナルたれ」ということに尽きるように思う。いたずらに浮足立つのはアマチュアの証拠だ。
 
プロのアスリートは、自分を信じ、結果が出るまで、結果を出す為に自分自身がやるべきことを常に自省しつつ考え抜いてクリアにし、そのやるべきことを労を惜しまずに無駄なく黙々とやり続ける。たとえば、私のイチローのイメージは、一本のヒットや一本のホームランを打つ為に、自分の日々の課題を明確にして黙々と単調なトレーニングをやり続けているイメージだ。トレーナーや周囲の人達とのコミュニケーションにも手を抜かず有効なトレーニングや食事などにも細かく気を使う。スランプになっても、彼が愚痴や弱音を吐いているような光景は想像できない。石川遼君もきっとそうだろう。我々も、本来、彼等とまったく同じで、日々、結果を出す為にやるべきことを先回りしてやり続け、情報収集や周囲とのコミュニケーションをサボらず、いたずらな不安や余計な悩みで時間を一切ロスすることなく粛々と今やるべきことを明確にしてやり続ける、ということが肝要だと思う。打った手が効かなければまたすぐに次の手を打つ、それの繰り返しだ。効果や結果がすぐに出なくても、忍耐強くやるべきことを実行し続けてさえいれば、そのうち、その水面下での一つ一つの努力や打ち手の積み重ねが効き始めて、目に見える結果につながる日が必ず来るのだと思う。
 
スタートアップには数々の難所が待ち構えている、まず渡り切らねばならないのは「魔の川」や「死の谷」。そして、それらを無事に渡り終わった後には「ダーウィンの海」 を泳ぎ切って行かねばならない。これから先に待ち構えているであろう数々の難所のことを想像するだけでもチャレンジ精神が高揚する。

2012年3月19日月曜日

ロボット掃除機に思う

しばらく前に添付のような記事を読んだ。

日本の家電各社が「ルンバ」を作れない理由 国内製造業の弱点はそこだ!!

もっともな論点であるが、こういう議論の前に、そもそもこの「ルンバ」は米国のiRobot社の発明商品である。iRobot社は1990年にMITのAI研究者3名によって設立された軍事用や産業用、家庭用のロボットを設計開発する会社だ。このルンバの初代モデルは2002年に発売されている。

昨年、東芝が「ルンバ」の対抗モデルを発売したが、そのCMを見た時に、ただのコピー商品にしか見えないことに失望した。更にがっかりしたのは、東芝はそれを自社で商品化したわけではなく、韓国メーカーからのOEM商品として市場導入したようだ。日本の家電メーカーがプライドというものを完全に無くしてしまっている典型的なケースと言ってしまうと、言い過ぎだろうか。。。

昔、ソニーは人のやらないことを真っ先にやる企業だった。それを当時の経済評論家の大宅壮一氏から、「ソニーは東芝のモルモットのようなものだ」と揶揄された。それからずいぶん長い時間が経過したが、今の日本の家電各社は極端な採算悪化に苦しんでいる。人が何か面白いものを出したら、それをコピーする文化はもういい加減返上して、あっちがあの手なら、こっちはこの手で行こう、という気概で人のやらない新商品を考えて欲しい。そしてそれが日本の家電産業がよみがえる唯一つの道であると思う。

2012年3月15日木曜日

♪ 雪やこんこん

今朝の通勤の地下鉄の中で、母親に連れられた幼子が、「♪雪やこんこん」を口ずさんでいた。まだこんな童謡が時代を超えて歌い継がれているのかと心がくすぐられた。調べてみたら、1911年の『尋常小学唱歌(二)』初出の文部省唱歌。作者は不詳。「こんこん」ではなくて「こんこ」が正しいらしい。

♪1:雪やこんこ 霰(あられ)やこんこ。 降つては降つては ずんずん積(つも)る。 山も野原も 綿帽子(わたぼうし)かぶり、枯木(かれき)残らず 花が咲く。

♪2: 雪やこんこ 霰やこんこ。 降つても降っても まだ降りやまぬ。 犬は喜び 庭駈(か)けまはり、猫は火燵(こたつ)で丸くなる。

何でもない歌詞なのだが、日本の美しい原風景が豊かに目の前に拡がり、犬と猫の違いなども生き生きと見事に表現しきっている素晴らしい歌詞であるとあらためて思った。

2012年2月13日月曜日

G1で見つけた10の事実

グロービスの堀義人さん達が主催されている「G1サミット」というイベントに堀さんからお誘いいただいたので、2泊3日の合宿に初参加してきました。政財界の第一線で活躍する多彩な方々が一堂に会して多方面にわたる課題について議論を展開する素晴らしいイベントでした。そこで、単に私が無知だった、ということも含めて「G1で見つけた10の事実」を羅列します。
  1. 日本にもこのような日本版ダボス会議のような場が存在していたこと。
  2. 人類に大きな貢献が期待される日本発で世界最先端のiPS細胞の研究開発が、実は資金繰りに苦労する状況にある。
  3. 日本の若者は国内旅行をしない。対馬には毎年韓国から7万人の観光客が来るが、日本人観光客は3万人にとどまる。
  4. 日本のリゾートの宿泊ビジネスは、目安として年間で100日が黒字、残りの265日は赤字。
  5. いわゆる大企業内でリストラの対象になって仕事をしていない企業内失業者を含めた日本の実質失業率は12%
  6. 1990年から2010年までの20年間で、米、独、日の名目GDPの成長はそれぞれ2.5倍、1.94倍、1.08倍であり、東京への一極集中が成長阻害要因の一つという分析があること。
  7. 農業従事者がTPPに反対しているように報道されているが、実際に反対しているのは農協の職員達とそれに扇動されている高齢者農家。若手は積極派が多い。
  8. 牛乳の生産コストはニュージーランドが最も安くて¥15/L、日本では一番安い北海道でも¥65/Lである。
  9. 第一列島線、第二列島線という東西冷戦時代から続く日本列島を基軸とした防衛線の存在と、中国のA2AD(Anti-Access/Area Denial)戦略。
  10. 中国では、一日に暴動が400-500件ほど発生している(年間で18万件前後)。
以上、その他多くの学びの中からの勝手な抜粋です。

2012年2月6日月曜日

日本家電産業の壊滅

日本の家電産業が業績悪化に苦しんでいる。2012年3月期最終見通しとして、パナソニックが7800億円の赤字、ソニーが2200億円の赤字、シャープが2900億円の赤字を発表した。三社合わせて1兆3000億円程の途方もない損失という衝撃的な数字だ。また、やはり長く優良企業の代名詞でもあった任天堂も今期450億円の赤字見通しを発表している。株価も低迷が続いている。ソニー株は2003年のソニーショック時の半値以下という惨憺たる状況でもはやハイテク株の名残はどこにもなく、2007年には7万円を超えた任天堂の株価もついに1万円を割った。

いったい何が起きているのか?

言うまでもなく、昨年は震災、タイの洪水、ヨーロッパの信用不安等が重なり、今回の数字にはそのようなことを理由とする一時的な要因も含まれてはいるが、 これらの業績不振が物語る本質は、決して一過性の問題ではなく、日本経済の構造的な問題と関連しているという点に注意しなければならない。

簡単に言うと、インターネットやクラウドが我々のインフラとして登場してから、20世紀までの家電やゲームの世界が完全に再定義されて様変わりし、まるで別の土俵に変わってしまった、ということに起因している。もはや従来のテレビやパソコンやモバイルやゲーム機といった垣根は無くなり、商品の定義もすっかり変わって、すべてがクラウドを前提とした別の生態系の上にシフトしてしまった。そしてデバイスそのものは、デジタライゼーションや「ムーアの法則」を背景にコモディティ化が進み、使い捨てを前提とした消耗品という位置付けに変わった。Before Internetの時代に日本勢が強味を発揮した高品質の耐久財を生み出すスタイルや、デバイスの特徴で差別化するスタイルはもはや通用しなくなったのだ。

結果として、20世紀の市場の覇者であった日本勢はその変化に追随できずに追いやられ、新たな生態系の構築に成功したアップルやグーグル、日本からの学びを活かして変化に素早くかつ貪欲に追随したサムソンなどに主役の座を完全に奪われてしまった、という構図である。上記の、日本を代表する優良企業の軒並みの巨額赤字決算は、その構図が、昨年の苦境をきっかけに一気に顕在化した、と捉えるべきであろう。今更ながらの話ではある。

今後、この変化は家電業界に留まらない。自動車業界も、テスラモーターズなど、クルマの会社というよりも、シリコンバレー発のIT企業と見做した方がいい新興勢力が生まれている。彼等は、モノ造りのスタイルも、スピードも、ビジネスのやり方も、従来のクルマの会社とはまったく違う。

家電業界で起きてしまったことを他業界は教訓として活かして欲しい。

週刊東洋経済2012/1/28号 表紙

2012年2月2日木曜日

荒天準備

盛田さんが残してくれた言葉の中に、「荒天準備」という言葉がある。世の中が好景気に浮かれているまさにその絶頂の時に、盛田さんは当時のソニー社内へ、「荒天準備」というメッセージを常に逸早く発信されていた。もともと船乗り用語で、「嵐に備えよ」というメッセージである。

ビジネスマンたるもの、順調だな、とか、絶好調だな、とか、幸せだな、とか、向かうところ敵なしだな、とか、一瞬でも思ったとしたら、それは自分自身に対する危険信号だと思わなければならないと思う。 盛田さんには常にそういう緊張感があった。

ビジネスというのは、常に下りのエスカレーターを掛け上がっているようなものだと思う。一瞬でも気を抜いて休んだ途端に真っ逆さまに下り落ちてしまう。現状維持なんてことはありえないのだ。そういう意味では企業経営者の資質としての大事な要素の一つとして「臆病」という要素もあると思う。生き残る為には常に外敵や環境の変化に対して臆病でなければならないのだ。

グーグルだって非常に臆病な会社だ。今の繁栄が明日も続くなんてこれっぽっちも思っていない。だからこそ、屍の山を築きながらも、常に新たな開発投資や企業買収に余念がないのだ。

今日のソニーの会見からはまったく緊張感が伝わってこなかった。プレゼンテーションなんか別に下手くそでも構わないから、本来、聞きたかったのは魂に訴えかけるメッセージだ。医療ビジネスなら医療ビジネスでもいいから、何ゆえソニーがこのタイミングで医療ビジネスに本腰を入れようとするのか、その大義や志を聞きたかった。今の危機的状況を跳ね返すパッションを感じたかった。そういう意味では、何一つ、心に響いてくるものが無かったのは極めて残念であった。

2012年1月22日日曜日

NHK番組での「青年の主張」っぽい「中高年の主張」


昨晩のNHKの番組でのプレゼンがところどころカットされていたので、こちらに全文を掲載致します。「スティーブ・ジョブズを事例に、失敗と挫折をテーマに3分以内でプレゼンして欲しい」というお題をいただいて考えた内容になります。なお、放送後、番組の主旨や全体構成、進行に関して私宛てにいただいているコメントもありますが、私はこの番組に御協力しただけの立場で、私自身がこの番組制作に関わったわけではありませんので、番組に対していただいたコメントはそのまま局の方にお伝えさせていただくように致します。

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スティーブ・ジョブズが世界中から称賛されるビジネスリーダーになった一番の要因は、彼が、いわゆる失敗や挫折をエネルギーにして結果的には壮大な物語を作り上げて行ったというその生きざまにこそあったと思います。

失敗や挫折というのは、実は我々にとって最大の学びのチャンス、自分を成長させるためのきっかけや気づきでもあるわけで、失敗にくじけず、何がまずかったかを反省して将来への足がかりにしていけば、人生における貴重な経験として生きるわけですし、そもそも、人間は失敗を恐れたり、失敗できない、と思うと元気がなくなってしまいます。

ジョブズも数々の失敗をしていますが、最大の挫折、すなわち「人生の転機」は、自ら創業したアップルを一度追い出されたことであったと思います。しかし、それが彼にとってその後の大きな業績を生み出す大きな経験として、後に生きたわけです。アップルを追い出されるという経験がなければ、iPodもiPhoneもiPadも、あるいはToy Storyもこの世に生れてなかったかもしれません。

2005年6月のスタンフォード大学での有名なスピーチの中で、彼は人生で起きる様々なことは後で振り返るとすべて繋がっている、ということをConnecting the dots、「点と点を繋ぐ」、という表現で語っています。人生に無駄はない、ということだと思います。

更にジョブズは、他にも、我々、特に若い人達にとって示唆に富むいくつかの言葉を残してくれました。まず、「Stay hungry, Stay foolish」。この言葉そのものは、ジョブズも有名なWhole Earth Catalogの最終刊からピックアップして座右の銘にしていたということで知られています。私自身も、自分が、居心地がいいとか、今の状態に満足と思ったら、それは自分への危険信号だと思うようにしていますが、この言葉は、常に我々の向上心をかきたててくれるパワーのある言葉だと思います

次に、「Keep looking, don't settle」。自分が本当にやりたいことを見つけるために、あきらめるな、妥協するな、求め続けろ、ということを言っています。

そして、Your time is limited, so don't waste it living someone else's life.  ちゃんと自分の人生を生きなさい、ということ。我々は知らず知らず、社会常識や、世間体や、親のアドバイスや、そういうものに囚われた人生を送ったりしがちですが、この言葉は我々の生き方に対する自戒の言葉として非常にいいものだと思います。

この写真(省略)は、日本人のスタイルを象徴する写真として持ってきたもので、典型的な日本の大企業の入社式の様子ですが、ここには日本人の安定志向とか、ブランド志向とか、一見行儀よく周囲に合わせるスタイルなどが表れていて、良いにしろ悪いにしろ、そのような傾向を象徴する写真だと思います。また、スイスのビジネススクールの調査によると、昨年の国際競争力ランキングにおいて、日本は起業家精神の項目で調査対象59カ国中最下位である、という結果であったそうです。

しかし、実は、時代を少し遡ると、日本にも世界から尊敬された偉大な起業家がいました。代表的なのはソニーを創業した井深大さんや盛田昭夫さんだと思いますが、それこそ、スティーブ・ジョブズも盛田さんのことを偉大な起業家そして時代を作ったチャレンジャーとして非常に慕っていたと聞いています。当時、ソニーはモルモットと呼ばれることがあり、「ソニーのモルモット精神」という言葉がありましたが、これは、失敗を恐れずに未知の領域に真っ先にチャレンジして新しい価値を誰よりも先に生み出すチャレンジ精神のことを表現していて、当時のソニースピリッツを象徴する言葉となっていました。

私からのメッセージとしては、震災もあって、日本はまさに崖っぷちに追い込まれた状態と言えますが、そんな今だからこそ、①人と違うことにチャレンジしようという気概、②リスクを恐れず、むしろリスクはチャンスだという発想、そして③自分のアジェンダに基づいて自らが行動する、もっと自由自在で天真爛漫かつ破天荒に自分の人生を生きるタイプの人達が数として増えれば、そこから優れた次世代のリーダーもおのずと生れてくるだろうと思っています。

2012年1月13日金曜日

ALEXCIOUS as an Auditorium

乱暴な意見に聞こえるかもしれませんが、私は、私も在籍していたソニーも含め、今の日本の多くの大企業の役割はある意味終わったと思っていて(立派に素晴らしい社会貢献を果たし終えた、という意味で)、20世紀のスタイルで大きくなり過ぎて硬直化した会社に、21世紀の成長ビジョンが描けないのはむしろ当然と思います。そういう大企業にいつまでも成長神話を期待するのは期待する方が問題で、期待する側の勝手なノスタルジーでもあると思います。今の時代は、はやり言葉を使って佐々木俊尚さん流に言えば、「グローバル・プラットフォームとノマドの時代」で、日本的な大企業の居場所がなくなってきている時代とも言えます。これからは、日本人も、もっと個人個人のアジェンダで世界に向けてどんどん積極的に発信していくことが重要で、それを手伝ってくれるのがインターネットというかクラウド等の「グローバル・プラットフォーム」であると思っています。

私は、ALEXCIOUSという「グローバル・オンライン・プラットフォーム」を、日本の多くの才能ある個人が登壇して世界に向けて発信する「舞台、オーディトリアム」というコンセプトで開発しました。今のものは、まだスタートしたばかりで、私が本来やりたいことのごく一部しか実現できていませんが、単なる物販の為のe-commerceをやろうとしているわけではありません。日本人は「モノ」作りはうまいけど「コト」作りが下手くそ、すなわち、ストーリー作りがあまり上手ではないと思うのですが、私が真にやっていきたいのは、多くの日本のチャレンジャー達が生み出している壮大な物語を世界にどんどん伝えていくことです。その物語をALEXCIOUSという舞台の上で登壇者の方々に自由に演じていただき、そのうちにいろんな共演も自然発生的に始まって、その舞台を世界中の人達が興味深く見ている、というイメージです。

昔、ソニーが日本の企業としてあの時代に一代で世界企業になったのは、story teller、life style creatorだったからです。Steve Jobsも、56年の生涯をかけて物語を作った人です。その物語に登場する重要な要素として、Mac, iMac, iPod, iPhone, iPad等々が位置づけられいて、単に、優れたデバイスを作るだけの人だったら、こうはならなかったと思います。

我々がこれからやって行かねばならないのは、20世紀の成功体験を忘れ、21世紀の新しい経済モデルや生態系を生み出していくようなことだと思います。そしてそれが日本発で世界に貢献する新しい形として進化していくようなことだと思います。

昨晩、そんなようなことを以下で小倉淳さんと語りました。

http://www.ustream.tv/recorded/19714445

今年も、志を共有できる行動力の旺盛なチャレンジングな人達との出会いを大切にしていきたいと思います。