2016年7月25日月曜日

ポケモンGOへの期待

7月22日に日本でも配信がスタートした「ポケモンGO」は、またたく間に、新たな社会現象ともいえる熱狂的なブームを世界中に巻き起こしました。任天堂の株価は一時高騰し、新たな集客手段としての活用など、ポケモンGOがもたらす経済効果への期待も高まって「ポケモノミクス」という言葉も使われました。過度な没入による事故・事件の話なども含め、ちまたはポケモンGOを巡る盛り沢山な話題で溢れ返りました。スタート直後はツイッターやフェイスブックのタイムラインもポケモンGO関連の投稿で埋め尽くされ、それらを見ていると、普段、スマホのゲームとは無縁の年配者も目立ちました。

ポケモンGOの開発を行った米ナイアンティックは、2010年にグーグルの社内ベンチャーとしてスタートし、2015年に独立したベンチャー企業です。スマホのGPS機能とグーグルマップをベースに、「この世界には世界制覇を競う2つの勢力がある」という設定で、地図上の仮想の拠点を実際に訪ねながら、緑組と青組に分かれて奪い合う陣取りゲーム「イングレス」を開発しました。ポケモンGOの前身ともいえるもので、3年間に世界中で1400万以上ダウンロードされ、現在もユーザー数を増やし続けています。先日は東京お台場で1万人以上のプレイヤーを集めた盛大なイベントも開催されました。

グーグルアースやグーグルマップ、ストリートビューなどでは、コンピュータの前に座ったまま世界中どこにでも行けるバーチャル体験が可能になりました。一方、ナイアンティックは、”Adventures on foot(自分の足で冒険しよう)”が理念で、スマホを片手に自ら外に出掛けてリアルな世界を体感するアプリケーションにこだわっています。

イングレスに加え、ポケモンGOの登場で、人類は拡張現実(AR)が作り出す世界に新たな一歩を踏み出しました。家から出ることがなかった人達が、外に出て歩き、移動し、会話し、実際の世界を見る、ということはそれだけでも素晴らしいことです。歩きスマホやながらスマホで事故の加害者になったり被害者にならないよう、安全確保には十分に注意する必要がありますが、ナイアンティックがポケモンやユーザーと共に切り開く未来に期待したいものです。

2016年6月23日木曜日

「ものは捉えよう」の地域振興

先週は、三重県津市、大阪市、宮城県加美郡加美町、新潟県新潟市と、国内での移動が多い週でした。

いつも思いますが、日本のこのコンパクトな国土は大きなアドバンテージだと思います。子供の頃や若い頃には、米国、中国、ロシアなどの大国に比べて国土が狭いことをある種のコンプレックスに感じていた時期がありました。しかし、よく考えたら、国内に時差が存在したり、国内移動に日数が掛かる「大きな国」よりも、同じタイムゾーンの中で、無理すれば日帰りで行き来できる距離圏に全国土が存在しているのは実に合理的だと思います。その中に、さまざまな地域の多様性がびっしりと高密度で詰まっています。

地域振興のためにはいくつかポイントがあると思いますが、その一つは、国が相変わらずの均一なばらまき行政を止めることです。地域ごとにメリハリをつけた国土活用や人口集中のグランドデザインを作ることが大事でしょう。

もう一つは、各地域も、国からの援助に頼ることなく、自立することです。自立のためには自分達の地域の位置付けを無理矢理こじつけることも効果があるように思います。たとえば、北海道なら、「日本のシリコンバレー」。明治以降、本土から開拓民が移り住んだ新天地としては共通点があり、テクノロジーの拠点ではなくても、高品質な農産品や畜産品、またはそれらを原材料とした独特のスイーツ等を商品化するエネルギーがあります。

あるいは、沖縄県なら、南半球の時代を唱えるラム・チャラン曰くの「北緯31度よりも南に全域が位置する唯一の日本の自治体」。アジア・太平洋地域の拠点としての意味合いが将来的にはますます大きくなることでしょう。

要は、ものは捉えようなのです。

2016年5月25日水曜日

前途多難な2020東京オリンピック

東京オリンピックを巡る不透明な金銭授受問題が持ち上がりました。FIFA(国際サッカー連盟)の腐敗が取沙汰されたばかりですが、IOC(国際オリンピック委員会)にも似たような構図があるということですね。

スポーツはさまざまなビッグ・ビジネスを生み出しています。しかし、「金儲け」の側面が行き過ぎると、そもそもスポーツをビジネスとして成り立たせている根幹が揺らぎます。最近も野球賭博や八百長相撲が問題になりましたが、この手の話は古今東西枚挙にいとまがありません。スポーツには本来、公正性が担保されるが故に生み出される「真剣勝負の魅力」がありますが、その裏には利権の構図が存在し、不透明なカネや汚れたカネの流れが発生し易いともいえます。

2020年のオリンピック東京招致獲得には壮大なドラマがありました。ジャック・ロゲIOC会長(当時)が「Tokyo」と発表した瞬間の感動を忘れられない日本人も多いでしょう。しかしその後、国立競技場問題、エンブレム問題と盛り上がりに水を差す事件が相次ぎ、あげくには今回の金銭授受疑惑です。肝心の東京都では舛添知事がやはり金銭問題で醜態を晒し続けていてシャレにもなりません。

招致確定時には、多くの国民が、東日本大震災で傷ついた我が国にとって反転のきっかけにもなる明るい話題として受け止めました。しかし今やアベノミクスの効果にも疑問符が付き、世相も変わりました。この機会に、東京でオリンピックを開催することの意味を我々もあらためて自問自答した方が良さそうです。

2016年4月27日水曜日

日本が生んだグローバルリーダー

新刊 『ソニー 盛田昭夫"時代の才能"を本気にさせたリーダー』がダイヤモンド社から発売されました。DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューでの森健二氏の連載が書籍化されたもののようです。

また、最近、古い本ですが、盛田さんが現在のソニー生命を立ち上げた時のストーリーをまとめた『ソニー生命 伸びる経営の研究』(渡部靖樹著、出版文化社)という本を読む機会がありました。金融業への進出は盛田さんの夢でもありましたが、ソニー生命も生保の世界に革新をもたらしました。

しかしながら、最近、若い人達にはこの名前を知らない人が増えました。先日、某国立大学で特別講義をやった際にも、大学3年生、4年生の学生達は、誰もソニーの創業者である井深大や盛田昭夫の名前を知りませんでした。スティーブ・ジョブズも憧れた日本人起業家がいたことを、もはや日本の若い世代が知らないのです。

時代を創るのは常にイノベーションであり、イノベーションは果敢にリスクをとってチャレンジすることからしか生まれません。あらためて日本が生んだ偉大な起業家達からの教えを大切にしたいと思います。

2016年3月25日金曜日

日本を良くするとは?

二月に引き続き、今月も沖縄を訪れました。沖縄科学技術大学院大学で開催された産学連携をテーマにした国際シンポジウムに招かれたのですが、ちょうど直前にブセナ・テラスで「G1サミット」が開催されたので、こちらにも四年ぶりに参加しました。

G1サミットは、さまざまな経済活動や政治活動がある中で異色の存在です。(株)グロービスを創業した堀義人氏が中心となって二〇〇九年に始まった「日本を良くする」ことを標榜したフォーラムで、現在は「一般社団法人G1サミット」として活動しています。

G1の活動は多岐に渡りますが、毎年二月か三月に、二泊三日の合宿形式で年に一度の「本会議」が日本各地で開催されます。大臣、代議士、官僚、自治体首長、大企業経営者、ベンチャー経営者、投資家、メディア、学者、研究者、学生、芸能人、アスリートなど、分野や年齢を問わず多彩な人達が集まり、日本が抱えるさまざまな課題について垣根を超えた自由な議論が展開されます。敢えて例えるなら、いわゆるダボス会議と呼ばれる「世界経済フォーラム年次総会」のミニチュア版、日本版といったところですが、各界のリーダーや有識者達が一堂に会して議論する場というのはありそうでなかなかない機会だと思います。

G1では、これまでの活動の集大成として、先日「日本を動かす『100の行動』」という本を出版しています。テーマは政策論から技術論まで盛りだくさんですが、「日本を良くする」ことや、「これからの世界における日本の役割」に興味のある人にとっては、頭を整理する上でも参考になると思います。

2016年2月24日水曜日

沖縄県経営者大会

先週末、沖縄県経営者協会主催の表記イベントに招かれ、沖縄を訪問しました。かねて、沖縄を訪れる時には、この地を巡る戦時中の悲劇や、現在の基地移転問題など、沖縄が背負っている歴史や苦悩について思いを寄せるように努めていますが、琉球王国の名残りを残す南国の美しく素晴らしいこの地の平和と発展を願っています。

イベントは盛大なもので、那覇市のホテルで開催されました。元三重県知事の北川正恭さん、元NHKキャスターの宮崎緑さんなどと一緒でした。北川さんの御子息には当社創業の時に手伝っていただいたご縁もあったので嬉しい偶然でもありました。

地方創生が叫ばれていますが、各自治体はそれぞれの取り組みでさまざま尽力されていると思います。現在、グローバルレベルでは大きな地殻変動が続いており、インドのコンサルタント、ラム・チャランの著作「Global Tilt」によると、既に北半球中心の時代は終わり、これからは北緯31度よりも南の地域にパワーシフトが起きているとあります。その説でいえば、北緯26度の那覇市を中心とした沖縄県はその対象範囲ですし、シャープの買収騒ぎで話題となっている鴻海も台湾発の巨大企業です。

ところで、沖縄県といえば長寿を連想しますが、実は現在、長寿の県別順位では沖縄県は女性が3位、男性は何と30位というランキングになっています(2013年公表データによる)。欧米流の食生活が逸早く入ってきた地でもあるので、やはりその影響が大きいようです。自然環境や健康的な食材にも恵まれた地ですから、再び健康や長寿をアピールできる地としての返り咲きを期待したいものです。

2015年12月24日木曜日

ピンチはチャンス

最近、東芝、富士通、VAIOのパソコン事業統合や、東芝とシャープのシロモノ家電事業統合のニュースが流れました。

長らく日本の経済発展を牽引してきた家電産業の苦境が一気に表面化したのは、東日本大震災に見舞われた翌年、2012年3月期の決算発表時でした。ソニー、パナソニック、シャープなどの家電大手各社が、軒並み一社当たり数千億円に及ぶ巨額の損失を計上して、世間に大きな衝撃を与えました。その後、各社各様の建て直し努力が続いていますが、この問題は、それぞれの企業固有の経営問題であると同時に、日本の家電産業全体が抱える構造的な問題でもあります。すなわち、産業政策的には、業界再編を視野に入れたダイナミックな産業革新の発想とアクションが必要です。

不祥事が発覚して、深刻な経営不振に直面する東芝のリストラが起点になって業界再編が進むのは皮肉な話ですが、きっかけはともかく、今後、日本家電産業がグローバル市場での競争力を再び取り戻すためには、手遅れになる前に先を急がねばなりません。一時「産業のコメ」とも呼ばれ、1980年台には隆盛を誇った日本の半導体産業が、今ではすっかり衰退してしまったことを思えば、残された時間は長くはないでしょう。

一方で、中国資本ですが、旧サンヨーのシロモノエンジニア達が頑張っているハイアールアジアや、ベンチャーで二枚羽の扇風機やこだわりのトースターなどを次々に商品化しているバルミューダなどにはチャレンジ精神に根差した元気なエネルギーを感じます。「家電」を文字通り、「家の電気製品」と解釈するならば、今後は「家のスマート化」や「家のインテリジェント化」という流れの中で家電を捉え直し、新たな製品や事業を創出していく戦略や取り組みが求められています。

家電産業のピンチは、ダイナミックな業界刷新の大きなチャンスでもあると思います。